† of Sword~剣の粛正
どうやら、男の自制心と自尊心はぼろぼろらしい。

が、なにをそんなに怒り猛っているのだろう。

人を殺していながら、私を殺していながら、奔放な実験を繰り返し、利己のみを行ってきたお前が、なぜ、そんなに怒り猛っているのだろう。

お門違いもすばらしいところだと思った。

彼の横に、並び立つ。

「あの」

「ン? なんだい?」

「粛正、してもいいですか」

そして彼は、

「ああ、どうぞ。これは君の†だ」

ディナーへエスコートする紳士のように、手で宙を撫で、道を開けてくれた。

さっき廊下に落としたはずの剣は、しかし今、それを必要とする私の手の中に、いつのまにか舞い戻っていた。

剣を手にした私と、ノイローゼ気味の男との距離は、たぶん、走って五歩。

私が動いたぐらいでたじろぐ男の首で、ヘッドフォンのコードが揺れていた、

まるで、男の心のように、細く、頼りなく。
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