† of Sword~剣の粛正
一、ニ、三、四、五、六――いやもっとたくさん、真っ黒く鋭い吹雪が、迫る。

(私、また死ぬ……?)

絶望を思いだし、瞠目するしかない私は、

「ほらほら危ない」

「っ!?」

彼にぐいと引っ張られた。まばたきもする暇もないほどの速さで、私の視界が変転する。

足が、床を離れる感覚。あ、とも言えないうちに私は、男から十メートルほど離れたところへ連れられていた。

驚く――ことはしなかった。

彼と出逢った時から、私の心は凪いでいる。いやそれ以前から。

だからただお礼を言う。

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

その、彼の背後でまた、パチン、という針が砕けたような音。

振り返ると、男がまたまた地団駄を踏んでいた。

「お前邪魔すんなよ!? お前邪魔すんなよっ!? お前邪魔すんなよぉぉお!?」

自分、というものを妨害され、貫けないことが男のストレスになっているらしい。

が、頭をがりがと掻きながら地団駄を踏み、ヘッドフォンのコードを揺らす男を、いっそ私は愉快だと思った。

思って、そんな利己的な男を、生かしてはおけないと決めた。

粛正してやる。
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