† of Sword~剣の粛正
彼は顎に手を当てた。

「難しい話だね。いや、あるいは簡単すぎる。罪は罪だよ。世界はこれを殺人というからね。殺人は法に触れる。法に触れることは罪だ。だけど、法に触れることがすべて†に抵触するわけじゃない。つまり、罪ではない」

「私のこれは、どちらですか」

「前者だよ。でもここに粛正という思想を持ってくることによって、それはまったく違うものへ変化する。考察の変換さ。

たとえばA国では犯罪であることもB国では許される。そういうものだね。

君の場合、有名なA国では許されないが、知られざるB国では認められる行いだ」

Aでは許されず、Bでは許される。私はそのAに所属している。

つまり、許されない。許されたいが、許されなくていいと思っている自分がいる。

凪いだ心は、まだ凪いでいる。

だから世界はあまりに静かで、廊下にまで、窓を叩く雨音が聞こえていた。
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