転生公爵令嬢のイチオシ!
「どうぞ」

空いているベンチにハンカチを敷いてくれた。

隣に座っていると勉強会の時にストライブ様の肩に寄りかかって寝てしまっていた時のことを思い出す。
『そろそろフレッド様が迎えに来ますよ』と起こしてくれた。
すぐ近くにストライブ様の顔があって驚いたわ!
蕩けるような笑顔で!!
私ってば肩と腕にくっついて眠っていたのよッ!!
だって温かくてとても良い香りがして…!

思い出して顔が赤くなっていたら、ストライブ様が上着を掛けてくれた。

「え?あ、ありがとうございます」

暖かいわ。それにこの香り…このあいだも。

「風が少し冷たいので」

微笑みながらサラリと言う。

ベンチにハンカチを敷いてくれることもそうだけど、こんなことお兄様以外にできる人がいるとは!
貴族令息ってやつは…。
さりげない優しさがとても様になってて格好いいけど!!
恥ずかしさを俯いて誤魔化す。

「クスッ。テストの結果のことですか?」

恥ずかしがってるのがバレた?
余計恥ずかしい!

「は、はい。今までで一番良い成績を残すことができました。ストライブ様、本当にありがとうございました」

お礼を伝えた。

「そ、それで…こちらを」

イッチくんマスコットをラッピングした包みを取り出す。
社交辞令で欲しいって言っただけかもしれないけど…。

「あの可愛らしい人形ですね。嬉しいです」

受け取ってくれた!
良かった!

「あ、あとこちらも…」

「これは?」

「私が焼いたクッキーです。先日はうちの料理人にお願いしたのですが、今回のクッキーは自分で焼いてみました」

「…」

「教えてもらいながら作りましたので、味は大丈夫だと思います。でも形が前回ほど綺麗ではないのですが…。よろしければぜひ」

マスコットだけではなく、お菓子も手作りしてお礼を伝えたかったのだ。

「ありがとうございます。…食べるのがもったいないですね」

私の手のひらの上にあるクッキーの包みを見ている。

「本当に嬉しいです」

クッキーを私の手ごとストライブ様の両手で包み込み、私を見つめる。

「ストライブ様?」

眉を少し寄せた泣きそうで、切なそうな瞳…。
どうしてそんな瞳で私を見るの?
また…目が離せなくなる。
どうして?
ドキドキと心臓が煩い。
人見知りのドキドキとは違う感じ。
胸が甘い痛みで苦しいような…。

「クリスク公爵令嬢、お願いがあります」

「え?」

「今度の王家主催のパーティーであなたのエスコートをさせていただけませんか?」


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