毎朝、甘い

第6話

レオと生徒会長、向かいのカフェに入って行く。
唯「嘘…」
まな「何?どうなってんの?」
唯「ああいう二人ってやっぱりつきあってるのかな?」
まな「そうじゃないの。カフェデートだもん」
唯「そっか…そうだよね」
 唯の中で回想
  顔を近づけて「大好物」と言うレオ。
  「大事にしろよ」と指にキスするレオ。

唯(なんか…私のこと、特別なのかな、って勝手に思ってた…)

しゅるしゅると沈んでいく唯。

まな「唯、竜崎のことが気になってるの?」
唯「え、あ、いや、その…」
 ん、と優しく微笑んで唯の目を覗き込んでくるまな。ぐっと気持ちを圧される唯。
唯「じ、実は…」
 数分後。
まな「えー?!竜崎が隣の部屋に引っ越してきて、唯が朝ごはん作ってるの?!」
唯「うん、まあ。でも簡単なものばかりだよ?」
まな「えー、でも毎朝でしょ。竜崎はどういう反応してんの」
唯「美味しいって食べてくれる」
唯(実際はうま、とかだけど)
まな「ま、確かにあのイケメンに美味しいって言われたらご飯作りたくなるかあ」
唯「ち、違うよ!男子高校生が朝ごはん抜きなんて、倒れちゃうから!」
まな「まあ、唯が世話焼きなのは知ってるけど。不登校の子のうちに通って結局その子学校に来るようになったもんね、
 でもさ、ただ世話焼いてるんじゃなくて、唯が竜崎のこと好きなんじゃないの?」
まな「え…ええっ」
唯「自覚症状ないんだ。別に好きじゃなかったらへー、生徒会長とつきあってんだ、とかで終わらない?さっきケーキ食べてたときの唯と比べたら、唯しょぼしょぼになってるよ」
唯「う…まあ、確かに…気にはなってるけど…」
まな「ほら、やっぱり」
唯「でも、それは竜崎苦が反則技を繰り出してくるからで」
唯(抱きついたりとか、顔近づけたりとか!)
まな(竜崎に何かやられたな…?)
まな「ふーん。じゃあさ、さくっと生徒会長とつきあってるの?とかきけばいいじゃん」
唯「そ、そんなコト言ったら、コイツ、俺に気があるって思わない?」
まな「大丈夫じゃない?パリピだからさらっと言うんじゃない」
唯(そうかな…明日、きいてみようかな…)

次の日の朝。
○竜崎の部屋のリビング

テーブルに朝食を並べる唯。レオ、顔を洗った体でやってくる。
レオ「いい匂い」
唯「スープリゾットなの」
レオ、さっそく椅子に座り、食べ始める。
レオ「うま。しみる」
唯「あ、あの竜崎君」
唯(聞かなきゃ…!生徒会長のこと…!)
レオ「うん?」
 にこっと笑って目を見られて言葉がひっこむ唯。とりつくろって
唯「えっと…明日、日曜日じゃない。起こす時間は何時がいいの?」
レオ「うん?休みの日は、いいよ。委員長もゆっくりしたいだろ」
唯「あ、そう?うん…じゃあ」
唯、表情が曇る。
唯(うまく聞けないなあ…)
レオ「委員長。明日、予定がないなら朝の9時頃うちに来て」
唯「え」
レオ「たまには俺がもてなすから。朝食も作らなくていい」
唯「ええっ」
レオ「お楽しみに」
 つん、と唯の鼻の頭を指先で触れる。
唯(すごい、楽しみ…!)


○昼休みの教室。

まなとお昼を食べている唯。いつも通り教室の端の方。

音楽が流れて校内放送が流れる。
放送部「皆さんこんにちは。お昼におじゃましますの時間です。今日は、生徒会長からみなさんにお話があるそうです」
生徒会長「皆さん、こんにちは。今日は、ビッグニュースがあっておじゃましました。昨日、わかったんですが、美術部の二年生、盛岡里恵さんが、春の高校生コンクールに入選を果たしました。作品を写真に撮ったものを見せてもらったのですが、素晴らしい出来栄えでした。校内新聞にも載せておきますので、皆さんも見てくださいね。一緒に感動しましょう。盛岡さんは一年生の頃から努力を重ねて…」
 
まな「生徒会長ってこんな風に、学校のニュースをマメに放送してくれるんだって部活組はすごく励みになるって言ってたよ」
唯「勉強できそうな感じだけど、それだけじゃないんだね」
まな「うん。生徒思いで有名なんだって。スポーツもできるらしくて、校内陸上大会でいつも上位入賞だって」
唯「すごいね…なんでもできるんだ…」
唯(竜崎君もパリピだけど、勉強できるみたいだし…なにげにお似合いの二人よね…)

唯、はっとして。
唯(いやいやいや、別に落ち込むことないじゃん!二人がつきあっていようといまいと…
  …いや、やっぱり気になる、けど…)
唯、卵焼きを一個食べる。
回想 レオ、唯の朝食を食べて「うま」と言っているところ。

唯(そうだ、落ち込むことないんだ。なんたって、私、明日竜崎君ちにお招きされてるんだもんね!無駄に落ち込むのはやめよう!!

唯、放送スピーカーの方を見て、心の中で呟く。

唯(私なんか、おもてなしされちゃうんだからー!)

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