毎朝、甘い

第7話

日曜の朝

○唯の部屋
鏡を覗き込んでいる唯。
唯「えっと…今日は学校がないから、私服だよね。こ、こんなのでいいかな?」
お気に入りの白のトップスとふわっとしたスカート。
唯(あんまりきちっとした格好も変かな。出かけるわけじゃないし)
 (でも、パンツにするとカジュアルすぎる気が…あー決まんないっ)

 ぱっと時計を見る。8時50分。
唯「やば!髪の毛もやってない!」

○竜崎のうち玄関

9時ぎりぎりに何とかレオの部屋に行く。いつものように鍵はかかってない。
*唯の格好は、さっきと同じ白のトップスとふんわりしたスカート。
唯「おじゃまします…」
 ふわん、といい匂いがする。
唯(あれ…これって…)

○竜崎のうち リビング

Tシャツにデニムパンツ。その上に裾の長いエプロンをしているレオ。
レオ「おう、来たか」
唯「え、え、竜崎君、エプロン!」
レオ「うん。もてなしだから」

テーブルの上に、サラダとたくさんの香ばしそうなパン。
唯「わあ、おいしそう…」
レオ「最近、開拓した美味いパン屋。朝イチで買ってきた」
唯「パンもだけど…あの」
レオ、にこっと笑う
レオ「コーヒー。淹れたてだから」
唯「そうだよね!いい匂い!」
レオ「うん。豆から挽いてる」
唯「そうなの?!すごいね」
レオ「うん。こだわりなんだ」
唯(はー…竜崎君、色んなことができるんだな…パリピって特殊技術が必要な人たちなのかなあ…)

お互いテーブルにつく。
コーヒーを飲む唯。ほうっと息をつく。
唯「すごい美味しい…すごい技持ってるね、竜崎君」
レオ「まだ修行中だから」
唯「そうなの?わ、パンもいただきます。かわいー!猫のパンがある」
 ほがらかにはしゃぐ唯にレオが目を細める。
レオ「猫、好きか」
唯「うん、猫か犬かってきかれたら猫かも」
レオ「前のうちにいたとき、近所の子猫がよく俺の部屋に入ってきてた」
唯「うそ。ほんとに!」
 子猫と聞いて、目を輝かせる唯。
レオ「なつこい猫でさ、いつも人の顔ぺろぺろ舐めるんだ。朝とかそれで起きてたな」
唯「…」
レオ「可愛くて、子猫に毎朝ちゅーして起きてた」
唯、思いつめた顔。
 ぱくっとパンを食べるレオ。唯が固くなってるのを見て、?と思う。

唯おそるおそる口を開く。
唯「あの…私にキスしたのも、猫だと思って間違えたからなの…?」
レオ「なに言って…え、いつ」
唯「公園で、竜崎君が寝てた時」
唯、真っ赤になって俯いている。
レオ「あ」
 考えをめぐらすレオ。次にあっ、という顔をして。
 頭を下げる。
レオ「悪かった。寝ぼけてた」
唯(謝ってくれた…覚えてなさそうだな、とは思ってたけど…)
 すると、レオがにっと笑って。
レオ「二度目は、ちゃんとするから」
唯「にど…!」
 かあっと赤くなる唯。
唯「もう、からかってばっかり…!」
 笑うレオ。さわやかな笑顔。
レオ「食べようぜ。まだパン、暖かい」
唯「うん!」
 楽しく朝食を食べる二人。

 朝食を食べ終えて。
唯(そろそろ帰った方がいいのかな…でも、もうちょっといたいな…)

 レオがちょっと考える顔をする。
レオ「委員長、この後…」
唯、何かのお誘い?と期待を膨らませた表情でレオを見る。

次の瞬間、レオのスマホが鳴る。テーブルの上に置かれていたので、液晶画面が唯からも見えた。画面には「流衣」の文字が。
スマホに出るレオ。

レオ「おう。…うん。そうか、うん。わかった」
 レオ、引き締まった顔。
 スマホを切る。少し苦味のある顔をして。
レオ「ごめん、委員長、俺、用事ができた」
 何か大事な用だというのは唯にもわかる。
唯「わかった」
 しっかりうなずく。

○レオのうちを出てドアを閉めたところ

唯。不安げな表情。
唯(竜崎君、やっぱり生徒会長とつきあってるのかな…)


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