毎朝、甘い
第8話
○日曜日の夕方 唯のうち キッチン
じゅわーといい音をさせながら、唯の母が揚げ物をしている
母「あちっ、ちちち」
唯「お母さん、大丈夫―?変わろうか?」
母「いいわよ、唯はいつもやってくれてるから、休みの日くらい私が!」
と、言いつつ、真剣な表情。仕事はできるが、料理は苦手。
唯「休みの日くらい休んでくれていいのに…」
母「あ、じゃあ唯、マヨネーズ買ってきてくれない?から揚げにはマヨがないとね!」
唯「はーい。じゃ、行ってくるね」
午前中のキメたスカート姿ではなく、シャツにデニムのラフな格好の唯。
仲のよさそうなカップルとすれ違う。
もわん、とレオと生徒会長が並んで歩く姿を想像してしまう。
唯(う…考えないようにしてたのにー!やっぱ…二人でデートとかしてるのかな)
ふう、と溜め息をつく。
スーパーに入ってマヨネーズを棚から取る。
ふっと隣の人と手が触れそうになる
唯「あ、ごめんなさい」
横を見るとレオが立っている。今日の午前中と同じ格好。Tシャツにデニム。(エプロンはしていない)
唯「竜崎君!」
レオ「おう。委員長もこのスーパー使ってるのか」
唯「うん。いつもここだよ。安いし」
レオ「その割には、会わなかったな。俺もいつもここなんだけど」
唯「それはそうでしょ。パリピの竜崎君と時間帯が違うんだよ」
レオ「は?」
思い切り怪訝そうなレオ
唯「え?何?」
レオ「なんか今、さらっと聞き捨てならねえことを言ったよな」
唯「えーと、だから。竜崎君が朝弱いのは、夜中に遊んでるからで…パリピなんでしょ?」
レオ、目をむく。
レオ「どうしてそうなるんだ…」
唯「だって言ったのは竜崎君だよ。帰りが遅くなって公園のベンチで寝てたって。朝方まで遊んでたんでしょ?」
レオ「…ちがう。あの日は特別。マジかよ…」
盛大に、はーっと溜め息をつくレオ
唯「え、ちがうの?!」
レオ「俺の帰りが遅いのはバイトのせい。18時から22時まで。駅近のカフェ『マリア』で働いてる」
唯「ええっ」
唯(そうか…そうだったんだ…じゃあパリピでも何でもないじゃん!)
唯「ごめんなさいっ!私誤解してた!ほんとごめんっ!」
レオ「まあ…出会い方が、悪かったってやつだよな」
唯「毎日、バイトなの?」
レオ「まあそうだな。日曜は休みがたまにある。今日は、ヘルプが入って朝から呼ばれたけど」
唯「え、今日の用ってバイトだったの?」
レオ「そう。厨房のスタッフが二人も風邪ひいちまって。大変だっていうからランチの下準備手伝いに行ってた」
唯「そうなんだ。大変だったね…」
唯(でも、電話は生徒会長からだったよね…見間違いだったのかな…)
ふと、レオの買い物カゴの中が見える。コーヒー豆が入ってる。
唯「そっか、カフェで働いてるから、コーヒーいれるの上手いんだね」
レオ、薄く笑う。
少しかがんで、唯に顔を近づける。
レオ「俺のコーヒー、俺の部屋で飲んだの、委員長が初めて」
唯「えっ…!」
唯、至近距離に来られて真っ赤になる。
唯「だから、近いってば」
レオ、くすくす笑う。
レジをすませて、スーパーを出ると、レオの背中。
唯「竜崎君」
レオ「遅いから送る。っていうか隣に住んでるしな」
唯(うそ…嬉しい。待っててくれたんだ)
二人で、並んで歩く。
唯(私と竜崎君でもカップルみたいに見えるかな…?)
レオ「委員長は、夕飯の買い物だったのか」
唯「うん、っていうか、お母さんが唐揚げ揚げるって気合入れてて」
レオ「へえ。でも仕事、忙しいんだろ」
唯「うん。私もそう言ったんだけど、たまの休みの日くらい作ってあげるって。すぐ無理するから気をつけないと」
レオ「委員長が普段頑張ってるからお返し、したいんだろ」
唯「そう?そんなに頑張ってないけど…」
レオ「俺の朝飯、いつも気合入ってる。サンキュ」
唯、かあっと赤くなる。
唯「ち、ちがうの、お母さんにしかご飯作ったことなかったから、他の人に美味しいって言われたこと、なくて。竜崎君が美味しいって言ってくれるから…それで…」
まなの台詞、思い出す。
まな『ま、確かにあのイケメンに美味しいって言われたらご飯作りたくなるかあ』
唯「ち、ちがうよ、竜崎君がイケメンだから作ってるんじゃないよ!」
レオ「へえ。俺ってイケメンなんだ」
唯、そう言われてますます赤くなる。
レオ、くすくす笑う。
唯「えーと、そうじゃなくて…」
頭の中がぐるぐるの唯。
レオ「期待してるから。よろしく」
またもや顔を近づけられる。
唯「だから、近いってば!」
夕暮れの中、二人並んで帰る
○学校の掃除時間
昇降口の靴箱をぴかぴかにする唯。
ふーっと、息をつく。額には汗。
流衣「すごくきれいね。ありがとう」
唯びくっとする。
唯(生徒会長!)
流衣「ときどき、ぴっかぴかのことがあって、誰なのかな、と思ってたんだけど、あなただったのね」
唯「た、たまたまです」
唯(聞きたい!竜崎君とつきあってるんですか、って聞きたーい!)
流衣、じっと唯を見る。
流衣「あなた…まだ、レオの側をうろちょろしてるの。悪いけど、彼、大事な時期なの。あんまり構わないでね」
唯「そ…そんなこと、どうして生徒会長が…言うんです…かっ!」
唯(わあ、言った!言ってしまった!)
流衣「ああ、私、レオのバイト先のカフェの娘なの。カフェのオーナーが私の父。父が彼に目をかけていて…もうすぐなのよ。バリスタの試験」
唯「バリ…え?」
流衣「そんなことも知らないの?レオはバリスタを目指して勉強中なのよ」
唯(知らなかった…そうなんだ…)
流衣「そんなことも知らないなんて、大した仲じゃないのね」
唯「うっ…」
ずきっと心を痛むことを言われて、顔が苦痛に歪む。
○日曜日の夕方 唯のうち キッチン
じゅわーといい音をさせながら、唯の母が揚げ物をしている
母「あちっ、ちちち」
唯「お母さん、大丈夫―?変わろうか?」
母「いいわよ、唯はいつもやってくれてるから、休みの日くらい私が!」
と、言いつつ、真剣な表情。仕事はできるが、料理は苦手。
唯「休みの日くらい休んでくれていいのに…」
母「あ、じゃあ唯、マヨネーズ買ってきてくれない?から揚げにはマヨがないとね!」
唯「はーい。じゃ、行ってくるね」
午前中のキメたスカート姿ではなく、シャツにデニムのラフな格好の唯。
仲のよさそうなカップルとすれ違う。
もわん、とレオと生徒会長が並んで歩く姿を想像してしまう。
唯(う…考えないようにしてたのにー!やっぱ…二人でデートとかしてるのかな)
ふう、と溜め息をつく。
スーパーに入ってマヨネーズを棚から取る。
ふっと隣の人と手が触れそうになる
唯「あ、ごめんなさい」
横を見るとレオが立っている。今日の午前中と同じ格好。Tシャツにデニム。(エプロンはしていない)
唯「竜崎君!」
レオ「おう。委員長もこのスーパー使ってるのか」
唯「うん。いつもここだよ。安いし」
レオ「その割には、会わなかったな。俺もいつもここなんだけど」
唯「それはそうでしょ。パリピの竜崎君と時間帯が違うんだよ」
レオ「は?」
思い切り怪訝そうなレオ
唯「え?何?」
レオ「なんか今、さらっと聞き捨てならねえことを言ったよな」
唯「えーと、だから。竜崎君が朝弱いのは、夜中に遊んでるからで…パリピなんでしょ?」
レオ、目をむく。
レオ「どうしてそうなるんだ…」
唯「だって言ったのは竜崎君だよ。帰りが遅くなって公園のベンチで寝てたって。朝方まで遊んでたんでしょ?」
レオ「…ちがう。あの日は特別。マジかよ…」
盛大に、はーっと溜め息をつくレオ
唯「え、ちがうの?!」
レオ「俺の帰りが遅いのはバイトのせい。18時から22時まで。駅近のカフェ『マリア』で働いてる」
唯「ええっ」
唯(そうか…そうだったんだ…じゃあパリピでも何でもないじゃん!)
唯「ごめんなさいっ!私誤解してた!ほんとごめんっ!」
レオ「まあ…出会い方が、悪かったってやつだよな」
唯「毎日、バイトなの?」
レオ「まあそうだな。日曜は休みがたまにある。今日は、ヘルプが入って朝から呼ばれたけど」
唯「え、今日の用ってバイトだったの?」
レオ「そう。厨房のスタッフが二人も風邪ひいちまって。大変だっていうからランチの下準備手伝いに行ってた」
唯「そうなんだ。大変だったね…」
唯(でも、電話は生徒会長からだったよね…見間違いだったのかな…)
ふと、レオの買い物カゴの中が見える。コーヒー豆が入ってる。
唯「そっか、カフェで働いてるから、コーヒーいれるの上手いんだね」
レオ、薄く笑う。
少しかがんで、唯に顔を近づける。
レオ「俺のコーヒー、俺の部屋で飲んだの、委員長が初めて」
唯「えっ…!」
唯、至近距離に来られて真っ赤になる。
唯「だから、近いってば」
レオ、くすくす笑う。
レジをすませて、スーパーを出ると、レオの背中。
唯「竜崎君」
レオ「遅いから送る。っていうか隣に住んでるしな」
唯(うそ…嬉しい。待っててくれたんだ)
二人で、並んで歩く。
唯(私と竜崎君でもカップルみたいに見えるかな…?)
レオ「委員長は、夕飯の買い物だったのか」
唯「うん、っていうか、お母さんが唐揚げ揚げるって気合入れてて」
レオ「へえ。でも仕事、忙しいんだろ」
唯「うん。私もそう言ったんだけど、たまの休みの日くらい作ってあげるって。すぐ無理するから気をつけないと」
レオ「委員長が普段頑張ってるからお返し、したいんだろ」
唯「そう?そんなに頑張ってないけど…」
レオ「俺の朝飯、いつも気合入ってる。サンキュ」
唯、かあっと赤くなる。
唯「ち、ちがうの、お母さんにしかご飯作ったことなかったから、他の人に美味しいって言われたこと、なくて。竜崎君が美味しいって言ってくれるから…それで…」
まなの台詞、思い出す。
まな『ま、確かにあのイケメンに美味しいって言われたらご飯作りたくなるかあ』
唯「ち、ちがうよ、竜崎君がイケメンだから作ってるんじゃないよ!」
レオ「へえ。俺ってイケメンなんだ」
唯、そう言われてますます赤くなる。
レオ、くすくす笑う。
唯「えーと、そうじゃなくて…」
頭の中がぐるぐるの唯。
レオ「期待してるから。よろしく」
またもや顔を近づけられる。
唯「だから、近いってば!」
夕暮れの中、二人並んで帰る
○学校の掃除時間
昇降口の靴箱をぴかぴかにする唯。
ふーっと、息をつく。額には汗。
流衣「すごくきれいね。ありがとう」
唯びくっとする。
唯(生徒会長!)
流衣「ときどき、ぴっかぴかのことがあって、誰なのかな、と思ってたんだけど、あなただったのね」
唯「た、たまたまです」
唯(聞きたい!竜崎君とつきあってるんですか、って聞きたーい!)
流衣、じっと唯を見る。
流衣「あなた…まだ、レオの側をうろちょろしてるの。悪いけど、彼、大事な時期なの。あんまり構わないでね」
唯「そ…そんなこと、どうして生徒会長が…言うんです…かっ!」
唯(わあ、言った!言ってしまった!)
流衣「ああ、私、レオのバイト先のカフェの娘なの。カフェのオーナーが私の父。父が彼に目をかけていて…もうすぐなのよ。バリスタの試験」
唯「バリ…え?」
流衣「そんなことも知らないの?レオはバリスタを目指して勉強中なのよ」
唯(知らなかった…そうなんだ…)
流衣「そんなことも知らないなんて、大した仲じゃないのね」
唯「うっ…」
ずきっと心を痛むことを言われて、顔が苦痛に歪む。