毎朝、甘い


第14話

○夜、23時頃。唯の部屋。勉強している唯のスマホが鳴って出る。
唯「レオ君?」
レオ「唯、起きてた?」
唯「もちろん。勉強中だもん。もうちょっとやってお風呂入る」
レオ「じゃあ、俺も一緒に入る」
唯「な、何言ってるの」
レオ「冗談。唯、ちょっと息抜きしにうちに来ないか。見せたいもんがある」
唯「?わかった。行くね」
唯、部屋着にカーディガンを羽織る。
唯(なんだろ…バイトで疲れてるはずなのに…何か、あったのかな…)

○レオのうち キッチンに立つレオ。
レオ「そのへんに座ってて」
唯「うん。おじゃまします」
 ゆい、そっとリビングのソファに座る。コーヒーの香りがする。
唯(わ、コーヒー淹れてくれてる?うれし…!)

レオ、両手にカップを持ってやって来る。
レオ「はい、こっちが唯の」
差し出されたカップにラテアートがされている。ハートとクマの可愛いやつ。
唯「あっ、絵がついてる!」
レオ「ラテアート。今日、オーナーから合格もらったんだ。だから、唯に見せたくて、さ」
唯「すごい、かわいい!こんなこともできるんだね、器用だね、レオ君」
レオ「バリスタは繊細さが命」
唯、カップのコーヒーをひと口飲む。
唯「うわーなんか味もさらに美味しくなった気がする…!」
レオ「そうか?」
唯「うん!すごい、私コーヒーって詳しくなかったけど、レオ君のコーヒー普通のと全然違う!」
レオ、じっと唯を見つめる。
唯「な、何?」
レオ「うん…やっぱ俺は、間違ってなかったな、って思って」
唯「え?」
レオ「初めて唯を意識したのは、入学したばっかの時のHRだったんだけど」
唯「う、うん」
レオ「最初は、唯、学級委員に選ばれて、しゅんとしてたんだけどさ、その後、クラス委員がHR仕切れ、って先生に言われてさ、委員決めたりすんの、やっただろ」
唯「ああ、そういえばやったね」
レオ「唯、最初はしぶしぶだった割に、いきなりスイッチ入ったみたいにテキパキ仕切りだしてさ。何、こいつ、って思ったよ」
唯「う…はりきりすぎて、嫌だった?」
 泣きそうな顔で言う唯。
レオ「いや、なんかすげーって感心して…こんな子が側にいたら、俺、頑張れるなあ、ってストレートに思った」
唯「ほ、ほんと?」
レオ「うん。『マリア』と学校の両立をなんとかしなきゃな、って悩んでからさ、唯のスイッチ入ったところ見て、なんか俺もいろいろ考えねーで動こう!ってそう思った」
唯「はあ…」
レオ「だからさ、あの公園で逢えたのが最大のラッキーで。何とか唯とつながりたくて、朝起こして、とか必死だった」
唯「じゃ、じゃあ、公園で寝起きで私にキスしたのは…?」
レオ「ああ、だから。気になってる子が夢に出てきたな、くらいしか思ってなかった。実家で子猫にちゅーしてたのもほんとだけど」
唯「そうだったんだ…え、なんか…なんていうか…あ、ありがとう?」
レオ「ぷっ。何言ってんだ」
唯「最初はからかわれてる、とか、無理難題ふっかけてきた!とかしか思ってなかったから…私のこと、パシリくらいにしか思ってないと思った」
レオ「そうか?俺、最初からわかりやすくなかった?めっちゃ触ってただろ」
唯「スキンシップが多いのがパリピなんだと思ってた」
レオ「くそ。パリピ問題は、いろいろ引き起こしてんな。…唯は?」
唯「え?」
レオ「俺のこと、最初は警戒してたろ。いつから俺のこと…好きだと思った…?」
 唯の顔を覗き込んでくるレオ
唯、赤くなりながら
唯「最初は、パリピっぽいし、わけわかんないと思ってたけど…生徒会長といるところ見て、すごく焦ったりとか。レオ君が私に触れてくるから…いつの間にか、自分はちょっと特別なのかな、って思ってて…でも生徒会長がいるし、とかぐるぐる考えるようになって。だんだんレオ君のことばっかり考えるようになって…好きなのかな、って気がついたの」
レオ「そっか」
レオ、唯の手に手を重ねる。
レオ「唯、数学の勉強の方、どうなんだ」
唯「うん。もともと苦手だから。数学ばっかりやってると、頭、煮えそうになっちゃう。でもね。まなちゃんが実は理数系が得意なの」
レオ「ああ伊藤まなか。いつも一緒にいるもんな。意外だな、見た目ギャルっぽいのに」
唯「そうなの。でも、まなちゃんしっかりしてるから、そういう面もあるんだよね。頼りになるよ。わかんないとこ教えてもらってる」
レオ「そっか。よかったな。適材適所だ」
唯「うん。助かってる。…そろそろ戻るね。お母さん帰ってくる」
レオ「くそ。帰したく、ねーなー」
唯「見つかったら怒られちゃう。でも、今がんばれば、もっと一緒にいられるようになる」
レオ「そうだな」
 レオ、唯の肩に、頭をぐりぐりすりつける。
唯「何やってるの?」
レオ「マーキング。誰も唯に触れませんように」
唯「猫みたい」
 唯、きゃはっと笑う。
レオ「頑張りどきだな。じゃあな」
唯「うん」
 手を振って、レオのうちを出て、自分の部屋に戻る唯。
唯(よし。もうちょっと問題集がんばろ)

○資格試験の結果がわかる日
唯のスマホが鳴る。
唯(レオ君からだ…!結果は…?!)

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