婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 侍従がお茶を用意すると、国王陛下が人払いをして執務室には三人だけになった。

「ブリジット、急ぎの謁見とはなにか不測の事態でもあったか?」
「なんでも言ってちょうだいね。わたくしは貴女こそ王太子妃にふさわしいと思っているのよ」

 続いて王妃様も優しい声でわたしを労るように気遣ってくれた。

僭越(せんえつ)ながら申し上げます。フィルレス様は王太子にふさわしいとは言えず、すぐにでも排除すべき存在だと思われます」
「うむ、それはわかっておるがあちらにも神竜と神獣がついておるからな。無茶はできぬ」
「ブリジット、フィルレスのどこがダメだというの?」

 国王陛下は慎重な態度を崩さないが、王妃様はわたしの言葉に不快感をあらわにした。ふたりの間でも意見が一致していないのかと、頭の片隅で考える。

「実は先日、フィルレス様の執務室で認定試験の打ち合わせをしておりましたが、ラティシア様がやってきて悋気を起こされたのです。しかしフィルレス様はそれを喜ばれ、わたしに冷たい言葉をかけられました」
「なんですって!? あの女……どこまでも忌々しいわね!」
「しかし、まだ準備が万全ではないのだ。今フィルレスを排除できるものなのか……」

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