婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
     * * *



 僕はラティと別れてから、政務をこなそうと王太子の執務室へと向かった。

 ラティの想いが通じてから、日々暴走しそうな激情を抑えている。前にラティの様子を見にいって、政務に影響が出ているとバレて危うく楽しみが減るところだった。

 でもラティからキスするようにうまく約束できたので、これ幸いと食後の日課として幸せな時間を過ごしていた。

 僕は狂気にも似たラティへの愛を持て余している。
 結婚式を指折り数えて、すべてを僕のものにできる日を待っていた。

 今懸念すべきはラティが僕の婚約者にふさわしくないと、反対意見が出ていることだった。

「フィルレス様、おはようございます」
「おはよう、アイザック。うわ、また盛りだくさんだね」
「はい、先ほどオズバーン侯爵が意見書をまとめて持ってきたところです」

 オズバーン侯爵は、王都の北に領地を構え造鉄業を営んでいる。そこで作られた鉄鋼は武器や鎧、調理器具にまで加工され流通している。
 そのオズバーン侯爵が持ってきたのは、ラティが王太子妃に不適格だという意見書だ。財力があり、発言力もそこそこ強かったが、最近は一段と目立つ行動を取りはじめた。

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