婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「うっ……」

 王妃様は意識を取り戻し、ゆっくりと起き上がったがまだ立つことはできないようだ。青ざめた顔で私を睨みつけて、こう言い放った。

「貴女、よくもやってくれたわね!」
「——え?」

 怨恨のこもった眼差しを向けられ、私は困惑するばかりだ。たった今治癒魔法をかけて王妃様を治したけれど、理解してもらえてないのか。

「あの、王妃様。どうやら毒を摂取されたようでしたので、緊急事態だと判断し治癒魔法をおかけしました。私は専属治癒師でもありますので、資格もあり問題ないと……」
「嘘おっしゃい! わかっているのよ! 貴女はわざと毒物を仕込んでわたくしを治癒したように見せかけたかったのでしょう!?」
「いえ、そのようなことはカールセンの名に誓っていたしません」

 もしかして毒を盛られたショックで、王妃様は混乱しているのかもしれない。ここは落ち着いて状況を説明した方がよさそうだ。

「確かに王妃様とお茶を一緒に飲んでいましたが、王妃様が口にされたものには触れておりません。途中から様子がおかしくなられたので、どうしたのかと思った矢先にお倒れになったのです」
「いいえ、騙されないわよ! 貴女が盛ったお菓子を食べたらどんどんおかしくなったのだから!! そうでもしないと認めてもらえないと思っていたのでしょう!?」

 私はようやく王妃様の罠に嵌ったのだと理解した。

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