婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 今日の妃教育がお茶会なのも、侍女を壁際に立たせたのも、私にお菓子を取らせたのも、すべてこの状況にするためだったのだ。

「ですが王妃様の目の前で盛り付けましたし、私はおかしなことなどしておりません」

 弁明はするけれど、果たしてどれほどの説得力があるのだろうか。

 妃教育も兼ねたお茶会で、私が盛り付けたお菓子を食べて王妃様が体調を崩したのは事実だ。先ほど責められたように、自作自演を疑われれば私が治癒魔法をかけたことすら怪しく見える。

 言い訳すらできない状況に奥歯を噛みしめた。

 糸が張り詰めたような空気を崩したのは、駆けつけてきた王妃様の専属治癒士だった。

「お待たせいたしました! 王妃様は……おや?」

 壮年の男性専属治癒士は急いで駆けつけたようだが、王妃様の顔を見て不思議そうにしている。私と目が合って、治癒魔法をかけた後だと状況を見て理解したらしく笑みを浮かべて頷いた。

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