婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 僕はやれやれと短くため息をついた。
 三大公爵家に認めてもらった上で、ラティは正式な婚約者になった。それに文句をつけるということは、ヒューデント王国の伝統にケチをつけるということだ。チラリとルノルマン公爵へ視線を向けると、いつもと変わらぬ表情で反論しはじめた。

「オズバーン侯爵。それは我ら三大公爵の審判(ジャッジ)が命をかけて下した判定に不服があるということか?」
「いいえ、違います。確かにラティシア様は王太子妃としての器がおありなのでしょう。そうではなく、攻撃魔法に特化したヒューデント王家の血筋に問題が起きるのではないかと申しているのです」
「ううむ。確かに今まで治癒魔法しか使えない者が妃になった例はないな……」

 ラティを王太子妃から引きずり落とそうとしたら、責めるところはそこしかないから必死だな。
 そう思いながら、僕は他の貴族たちの様子を観察していた。数人の反対派の貴族は頷きながら聞いている。国王は今のところ中立を装っているが、腹の中はどうだかわからない。

 国王は前回もあれだけ脅したのにラティのフォローをしないし、僕の様子を窺う素振りもない。ということは反対派を抑え込む気がないようだ。
 なにか、切り札を手に入れたのか……?

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