婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 街の人たちもお洒落を楽しむ人間はおらず、最低限の身だしなみを整えているだけのように見える。商店に並ぶ品数も少なく、満足な生活が送れるのか不安が募った。

「それは半年前まで魔物による被害が大きく、最近ようやく経済も回復してきたところなのです。近隣の小さな街はもっと復旧が遅れています」
「お屋敷は大丈夫だったのですか?」

 オリバー様の言葉に驚き、わたしが過ごす屋敷に問題がないか、思わず確かめた。

「はい、屋敷につきましては頑丈だけが取り柄なので心配ありません。安心してお過ごしください」
「そうですか、それならよかったですわ」

 確かにそう聞いていたけれど、屋敷に着いたわたしは口をあんぐりと開け要塞のような屋敷を見上げた。

 美しい彫刻もなく、灰色のレンガを積み上げただけの要塞で、どうやって快適に過ごすのか疑問しか浮かばない。

「本当にコートデール公爵様もここに住んでおられるのですか?」
「もちろんです。このような見た目では……やはりご令嬢には受け入れ難いですよね」
「…………」

 なにも言えなくなり、曖昧に微笑んでその場をやり過ごした。オリバー様も慣れた様子で「皆様同様の反応ですので、理解はしているつもりです」と言って笑みを浮かる。

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