婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
この貴族は前回治癒室へ来た時に私が治療した患者だ。名前はジョージ・ヘルキス。子爵家の当主で四三歳の男性、登城した際に階段で足を滑らせて転げ落ち治癒室へ運ばれてきた。大きな怪我はなかったが、後頭部を強打しており治癒魔法をかけたと記載されている。
階段から落下したというので全身に『癒しの光』をかけたし、間違いなく完治のサインもあった。私の記憶とも相違ない。
「お待たせいたしました。こちらは完治証明のサインもいただいていますので、先日の治療に関しては問題ないようでしたが……」
「なんだと!? ではなぜここに青あざがあるのだ!?」
そう言ってヘルキス子爵はシャツを捲り上げ脇腹を見せた。
確かに細長い青あざができているが、もしできていたとしても全身に治癒魔法をかけているから完治しているはずだ。
私は少しだけ考えて、心の中でため息をついた。こういったクレームは治癒室で勤務していれば誰もが経験するものだから、マニュアル通り対応することにした。
「大変失礼いたしました。それではもう一度治療させていただきます」
「ふんっ! わかればいいんだ! まったく、生意気な女だな!」
階段から落下したというので全身に『癒しの光』をかけたし、間違いなく完治のサインもあった。私の記憶とも相違ない。
「お待たせいたしました。こちらは完治証明のサインもいただいていますので、先日の治療に関しては問題ないようでしたが……」
「なんだと!? ではなぜここに青あざがあるのだ!?」
そう言ってヘルキス子爵はシャツを捲り上げ脇腹を見せた。
確かに細長い青あざができているが、もしできていたとしても全身に治癒魔法をかけているから完治しているはずだ。
私は少しだけ考えて、心の中でため息をついた。こういったクレームは治癒室で勤務していれば誰もが経験するものだから、マニュアル通り対応することにした。
「大変失礼いたしました。それではもう一度治療させていただきます」
「ふんっ! わかればいいんだ! まったく、生意気な女だな!」