婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 そう考えていると、オズバーン侯爵が驚くべき内容を口にした。

「実は、私の娘ブリジットが先日、大地の神より聖なる浄化の乙女として選ばれました。魔力も膨大で攻撃魔法も使えます。ブリジットこそがフィルレス様の伴侶にふさわしいかと存じます」

 なるほど、聖女か。それは気が大きくなるわけだ。
 この世界の穢れを祓う特別な存在。大地の神に認められた聖女は膨大な魔力を持ち、大地を清めることでこの世界は闇に包まれることがない。太陽の神は破邪を、月の女神は癒しを、大地の神は浄化を司ると古い文献に書かれていた。

「へえ、それは素晴らしいことだね。ブリジット嬢が聖女としてこの世の穢れを祓ってくれることを期待しよう」
「では——」
「だけど、僕の婚約者はラティだ。それを変えるつもりはない。それにカールセン家が治癒魔法しか使えないのは、月の女神の末裔だからだよ」

 僕の言葉に議会がざわめきたつ。今までは公表していなかったけれど、ラティの治癒魔法は特別なんてものじゃない。あらゆる怪我や病を目の前で一瞬にして回復させる魔法はまさしく神技だ。

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