婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「ラティシア・カールセンは治癒室にて明らかに手を抜いた治療をして、多数のクレームが寄せられております。また自身が月の女神の末裔であると根拠のない話を王太子にして、婚約者の座を手にしました。さらに異性と不適切な関係であるという証言がヘルメルト・オズバーン侯爵様より上がっております」

 オズバーン侯爵が証言台へ進み、自信満々に胸を張る。

 心当たりがあるのは最初だけで、それだって言いがかりだ。月の女神の末裔については確かにそうだけど、そんなことを伝える前に婚約者になっていた。最後の異性と不適切な関係についてはまったく意味がわからない。

「オズバーン侯爵、この内容について相違ないか?」
「はい。この内容は私が直接貴族たちから話を聞き、まとめた報告書でございます。いずれも証拠と一緒に提出いたしました」
「うむ、証拠をここへ」

 国王陛下の指示で事務官が木箱に入れられた映像水晶を、証言台に置かれていた箱型の魔道具にセットする。これは映像水晶に記録された内容を大きく映し出す魔道具だ。

 事務官が箱型の魔道具に魔力を注ぐと、空中にその映像が流れ始めた。

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