婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 それからずっと僕はラティのそばで寄り添った。
 エリアスがさまざまな薬を試し、治癒魔法も重ねがけしていく。その間は政務を他の担当に振り分け、食事も寝室でとり、夜はラティの冷えた身体を温めるため同じベッドで眠った。

 ラティの診察時間を使って、ラティの専属メイドとしてつけた影に事情聴取もした。寝室の隣の私室に僕の影でもあるアンバーを呼び出す。茶髪をひとつにまとめ、ヘーゼルの瞳には後悔の念が浮かんでいた。
 僕は気にせず、アンバーの前に液体の入った五個のグラスを並べる。

「アンバー。この中から毒入りのグラスを選べ」
「フィルレス様、大変申し訳ございません。私の失態でラティシア様に——」
「言い訳はいらない。質問に答えろ」
「は、はい……恐れ入りますが、こちらのグラスには毒が入っておりません」
「そうか」

 そう言って、僕はグラスとは別のカップに入った紅茶を飲もうと手に取った。

「フィルレス様、恐れ入りますがそちらのカップは毒入りでございます。口にしないでください」
「……正解だ。鑑定眼に狂いはないな」
「はい。自分でも当日すぐに確かめました」

 カップを元の位置に戻して、アンバーの能力が正常であることを確認した。あらゆる可能性を探るため、あえて試すような行動をしたのだ。

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