婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 最初に自分の耳を疑った。

 フィル様の即位は納得できるが、なぜ私たちの婚姻まで同時に盛り込まれているのか。

 異議があるものは挙手せよというけれど、誰も手を挙げないし、なんなら貴族たちはホクホクの笑顔を浮かべている。
 グラントリー様はニヤニヤしているし、アルテミオ様は事前に把握していたのか涼しい顔をしていた。良心の要であるアイザック様にも視線を向けたけど、うんうんと大きく頷いていて賛成のようだ。

 ちょっと待ってほしい。私は王太子妃の教育しか受けていないのだ。いくらなんでも無理すぎる!!

 王太子妃と王妃では責任の重さが違う。こなす政務も、立ち居振る舞いも、諸外国との交流も、なにもかもヒューデント王国の淑女代表として見られるのだ。

 今までの妃教育でなにができるのか考えてみるけど、あまりの展開に頭がついていかない。
 私の思考が空回りしているうちにフィル様がどんどん話を進めていく。

「それでは全会一致によりこの瞬間から僕が国王に就任する。ラティシアとの婚姻についてはこの場で婚姻宣誓書へサインし、結婚式については予定通り執りおこなう。僕の戴冠式も同日に済ませ近隣諸国へ周知することとする」 

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