婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 会議室は拍手喝采に包まれた。

 いつかの光景とダブって見えるのは気のせいではないはずだ。あの時もフィル様の手のひらの上で、コロコロと転がされたと記憶している。

「えっ、ちょっと、フィル様!?」

 ハッと我に返り声をあげるが、割れんばかりの歓声でフィル様に声が届かない。
 いや、私を見てニコニコと笑っているから、きっと届いているのに聞こえないふりをしている。

 いつもよりご機嫌な笑みを浮かべたフィル様が右手を挙げると、歓声が止んで会議室は落ち着きを取り戻した。

「続いて罪人たちに処罰を言い渡す」

 フィル様の凜として覇気のこもった声が私の耳朶(じだ)を震わせた。私とフィル様の結婚については後で抗議することにして、フィル様が下す処罰を見届けることにする。

「ヘルメルト・オズバーン。王太子の婚約者について悪意を持って意見書を提出し、混乱を招いたことは内乱罪に値する。よってオズバーン侯爵については子爵へ降爵し、領地の半分を国へ返還せよ。また爵位を後継者へ譲渡し、首謀者ヘルメルトは領地から出ることを禁ずる」

 オズバーン侯爵への刑罰が下されたが、ブリジット様は認定試験の結果を聞いてから俯いたままで耳に入っていない様子だ。

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