婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 それからどれくらいの時間が経ったのか、すっかり日が落ちて室内灯の明かりがフィル様の肩越しに灯っていた。

「はあ、これでやっとラティの全部が僕のものになった」

 フィル様の声でぼんやりと意識が戻った。何度も何度も重すぎる愛を注がれ、フィル様に与えられる喜びに満たされている。

 胸元にはキスの跡が赤い花びらのようにつ散らされて、まるでベッドの上の薔薇の花びらみたいだ。指先すら動かせない私を、フィル様は宝物を扱うように優しく抱きしめる。

 そして独り言を私の耳元で囁いた。

「でもヤバいな。ラティがかわいすぎて全然やめられない」
「ふ、あ……!?」

 終わりが見えないフィル様の愛に抗う術はなく、限界を超えた意識は闇の中へ落ちていく。
 結局、翌日の昼過ぎまで貪るようなフィル様の愛を享受した。


< 199 / 237 >

この作品をシェア

pagetop