婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 それから数日してラティシア様がようやく目覚め、フィルレス様に笑顔が戻った。都合がよすぎるかもしれないが、太陽の創世神に感謝を捧げた。

 フィルレス様は毒を持った犯人の目星がついているのか、的確な捜査指示を出している。俺はそれに従い、日々情報を集めていた。

 聖女の件については内通者から聞いていて、ラティシア様がいる治癒室へ訪れ騒ぎを起こしたのも耳にしていた。ラティシア様の後輩治癒士でユーリという女性が、事の成り行きを細かく教えてくれたのだ。

 ユーリは密かにラティシア様を月の女神様だと呼び、今でも強く慕っている。ユーリがラティシア様のことを語る際の、キラキラした表情が眩しくて目が離せない。

 今後の調査のために彼女に決まった相手がいるのか調べてみよう。これはあくまで今後の諜報活動を円滑におこなうためなのだと、自分に言い聞かせた。

 その夜、フィルレス様から新たな指示を受けた。

『そうだ、アイザック。さっきユニコーンを見つけたから、契約してきたよ』
『はい? ユニコーンって……聖女に寄り添う幻獣ではないですか?』
『うん、そうだけど。幻獣なんだから契約できるでしょ。しばらくはあいつらの尻尾を掴むために秘密だけどね』

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