婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「ですが、わたしはこの世でたったひとりの聖女です。特別な存在だということは間違いない事実ですわ」
「……私は月の女神の末裔です」
「それは……苦し紛れの嘘にしてもひどいですよ」

 やっぱり信じてもらえないか……証明しろと言われても、怪我人がいなければ治癒魔法も使えないし。いや、怪我人がいなくても治癒魔法が好きな子たちがいたわね。

「では神竜に証明してもらいます。それでよろしいでしょうか?」
「できるのならどうぞ」
「バハムート」

 私がそう呼ぶと、一陣の風とともに銀翼の神竜が現れた。

《呼んだか、ラティシア》
「うん、私が月の女神の末裔だと証明したいのだけど、協力してくれる?」
《うむ、任せろ》

 バハムートは私の前でホバリングして空中で静止している。そっと両手を添えて、治癒魔法をかけた。

癒しの光(ルナヒール)

 白く淡い光がバハムートを包み込んで、幻想的な光景が広がる。他の人が使う治癒魔法ではこんな風に発光しないから、魔法を使うところを見ればわかってくれるかと考えた。光が収まりブリジット様に視線を向けるとポカンとした様子でこちらを見ている。

「これが月の女神の末裔だけが使える特殊な治癒魔法です」
「え……それだけですか? それでは証明したとは言えませんね」

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