婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「なにが希望だ?」
「えーと、そろそろラティシア様に挨拶した——」
「却下だ」
「えええええ!! なんで!? なんでオレだけ除け者なんですか!?」

 グレイをラティに近づけない理由なんて決まっている。あいつはあの美貌を使って、女をたらし込む天才だからだ。

 ラティならそんなことで気持ちが動かないとわかっているけれど、僕が近づけたくないだけだ。グレイに決して教えるつもりはないけれど。

 文句を言い続けるグレイを無視して僕は口を開いた。

「アイザックは反対派の貴族のリストと聖女の動向を、シアンとグレイはユニコーンがどんな能力を持っているのか調べてくれ」
「「「御意」」」
 命令すれば渋々ながらグレイも従った。それから僕は国王の動向を注意深く(うかが)うことにした。



 それから三日後の夜。

 僕は執務室で部下たちの報告書に目を通していた。反対派の貴族は先日の国議で反応を見た通りだった。裏でオズバーン侯爵が先導し資金提供もしているようだ。

 資金提供を目的に反対派になっている貴族もいるようなので、リストからピックアップして僕の信奉者にすると決める。資金もそうだが王家が後ろ盾になると言えば、断る貴族はいない。

 それからユニコーンについての調査資料には、興味深い内容が書かれていた。

「へえ……ユニコーンの特殊能力か」

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