婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 ユニコーンは大地の神と使いとして存在する幻獣だ。古文書では太陽の神の使いはバハムート、月の女神の使いはフェンリルがいたと記されていたと書かれている。

 あの犬が最初からラティに懐いていたのは、そういう理由もあったのかと納得した。

 そして幻獣たちには特殊能力がある。バハムートはすべてを滅殺するブレス、フェンリルは影から影へ移動できるスキル。

 そしてユニコーンには——

「穢れを取り込み毒として放てるねえ……まあ、ユニコーンが犯人なら不可解な状況も納得だな」

 この前ラティを治癒室まで迎えにいった時、かなり強力な結界が張られていた。あれがユニコーンのものなら、自分の周囲に結界をはれば存在自体を隠すことができる。

 その上で毒を放ったとしたら、臭いも残さず密かに暗殺することができるだろう。

「それなら、まずはユニコーンを捕まえないとね」

 僕はやっと犯人を捕まえられる喜びで、笑みを浮かべた。


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