婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「ラティ、なにかいいことがあった?」
「え、わかりますか? 実はこの食事を作ってくれるコックたちに、日頃のお礼を伝えてきたのです。そうしたらみんな喜んでくれて、私も嬉しくて」
「あー……なるほどね。またファンが増えたのか」

 フィル様が半眼で遠くを見つめている。今回はフィル様の膝の上ではなく、きちんと椅子に座って食事をしていた。

「よくわかりませんが、これからもおいしい食事を作ってくれると宣言してくれました」
「うん、そうなるよね。わかってる。でもね」

 満面の笑みを浮かべたフィル様は、私の手を掬い上げ指を絡ませる。

「あまり嫉妬させないでほしいな」
「え? そんなつもりはないのですが……」
「ラティが理解していないのが問題だよね。僕の独占欲を理解してもらうには、今までの方法では生ぬるいみたいだから、やっぱりアレしかないかな」

 そう言ってフィル様は立ち上がり、風魔法を巧みに操って私を宙に浮かせた。

「ええっ! フィル様、ちょっと待ってください!」

 私の言葉ににっこりと笑顔を返し、つい先程まで座っていた席に腰を下ろしふわりと膝の上に私を乗せる。

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