婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 ものすごく豪華な顔ぶれのお茶会に一瞬だけ(ひる)んだのは内緒だ。この三人は信頼できるので、フィル様に相談し了承してもらえたので、手紙で事情を知らせている。

「皆様にご心配をおかけして申し訳ありませんでした。すっかり全快したので大丈夫です」
「それでも心配ですわ。こちらの薬はわたくしの伝手で取り寄せた強力な解毒薬ですの。いざという時のためにお持ちになってくださいませ」

 イライザ様が青い小瓶をテーブルに置いた。そんな心遣いが嬉しくて笑顔で受け取る。

「お姉様! こちらもお持ちください! これは皇族に伝わる万能薬です。解毒はできませんが、その後の体調回復なら効果があります」

 エルビーナ様もピンクの小瓶をそっと差し出してくれた。
 皇族の秘薬なんて受け取っていいのかと思ったけれど、翡翠の瞳の真っ直ぐな視線を受けて断れず受け取ることにした。

「おふたりとも本当にありがとうございます。貴重な薬は大切に使わせていただきます」
「なにをおっしゃるのですか。恩人であるラティシア様のためなら、いくらでも解毒薬を取り寄せますわ!」
「わたくしだってクラスメイトに協力してもらえば万能薬は作れますの! ですから遠慮せずにお使いください!」

 嬉しい申し出にお礼を言って、私は今日の本題を切り出した。

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