婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 半眼でバハムートを睨むとそっと視線を逸らされる。

 私は短くため息を吐いた。主従契約は絶対的効力を持つからバハムートは口止めされたら言えないだろうし、フィル様も私のことを心配してくれているのはわかる。

 フェンリルがいるから問題ないのに、食後の毒物チェックだって欠かさない。今朝も息も絶え絶えになったところでやっと解放されたが、下手をすると私の腰が砕けてしまいそうになるので、ほどほどにしてほしいのにまったく聞いてくれないのだ。

 本当にどこまでも心配性なフィル様に呆れながらも、それだけ私のことを想ってくれているのだと実感して顔が緩むのを止められない。

「わかったわ、それじゃあ、今夜は楽しみにしているとフィル様に伝えてくれる?」
「うむ、任せておけ」

 コクッと頷いたバハムートは一陣の風に乗って、姿を消した。私はそのまま妃教育を受けるため、教師の待つ部屋へ向かった。ところが——



< 72 / 237 >

この作品をシェア

pagetop