オムライスは甘口で

「またオムライスか?」

 この日も美雨はこりずにオムライスを注文した。
 互いに自己紹介をしてから少しだけ距離が縮まった気がするのは気のせいだろうか。

「今日も遅かったな?仕事か?」
「はい、残業です。最近忙しくて……」

 美雨は残業で遅くなったからと自分で自分に言い訳を用意し、ラストオーダーの直前にやってきた。
 閉店ギリギリに来れば、また真紘に家まで送ってもらえるのではないかと密かに期待する自分がいる。下心がみえみえのやましい浅知恵だ。

「ごちそうさまでした。お会計お願いします」

 席を立つ前、厨房の方をチラリと見たが真紘は無反応だった。
 内心がっかりしながらレジカウンターの前でお会計を済ませていく。今日も美雨が最後の客だった。

「美雨」

 ドアノブに手をかけた時、真紘に名前を呼ばれ何かを投げてよこされる。
 反射的に受け取るとチャリンという金属が擦れる音がした。

「外で待ってろ」

 真紘はそう言うとバックヤードに下がって行った。
 美雨は手のひらを開き、投げられたものを確認した。
 真紘が投げてよこしたのは鈴がついた鍵だった。形状からして家の鍵ではなさそう。

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