オムライスは甘口で
高鳴る心臓を落ち着けながら言われた通り店の前で待っていると、コックコートから私服に着替えた真紘がやってきた。
「よしよし、イイ子で待ってたな」
まるで子供のように頭を撫でられ、美雨は首をすくめた。真紘はそのまま店の裏手に回ると、こっちに来いとばかりに美雨を手招きした。
倉庫のシャッターを開けると、そこには一台の大型バイクが停車していた。
「ほらよ」
真紘からヘルメットを渡される。もしかして今日はバイクで送ってくれるということ?
(パンツスタイルで良かった!!)
美雨は真紘にバイクのキーを返すと、渡されたヘルメットを装着した。真紘に倣いバイクに跨り、はたと気がつく。
「あの、どこに掴まったらいいんですか?」
「ここ」
腕を引っ張られ、真紘の腰を抱くようにクロスさせられる。美雨は広い背中に顔を埋める。真紘からはオムライスにかけられているトマトソースと同じ香りがした。
「怖かったらしがみついとけ」
バイクがゆっくりと走り出していく。
車とは全然違う。風を切る音が段違いだった。
住宅街を走るとあってそこまでスピードは出ておらず怖くはなかったけれど、美雨は役得とばかりに真紘の背中に抱きついた。
心臓がドクンドクンと大きく脈打つ。恐怖心からくる吊り橋効果でないことは明らかだった。