オムライスは甘口で

「真紘さん……!?どうしてここに!?お店、辞めたんじゃ……」
「どうしてここにって……自分の家に帰って来たらまずいのか?」
「……自分の家?」
「ホールの店員は俺の母親で、キッチンに立ってんのは俺の親父。よりどり亭は家族で経営してるんだ。知らなかったのか?」

 ……知らなかったに決まっている。家族経営ですって?

「じゃあ、なんでいきなりお店からいなくなったんですか?」

 急にいなくなって美雨がどれだけショックを受けたことか。
 真紘が答えようとした時、空気を読まない美雨のお腹がぐーっと鳴った。

「何も食ってないのか?オムライスで良かったら作ってやるよ」

 真紘にオムライスを作ってもらえると聞いて、美雨にわかに色めき立った。真紘がよりどり亭のキッチンから消えた二週間、美雨は彼のオムライスが恋しくてたまらなかった。

 真紘は美雨をよりどり亭の真裏にある一軒家に連れて来た。どうやら家族経営というのは本当らしい。
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