オムライスは甘口で


(うわ……。とんでもないハズレを引いた……)

 二十七歳の美雨は瀬戸際に立たされていた。
 二十代も後半を迎え結婚適齢期になると、美雨の周囲は結婚、出産ラッシュが始まった。焦る必要はないと自分に言い聞かせてはみるものの、彼氏もおらず目ぼしい男性も見当たらない現状では結婚など夢のまた夢。
 そんな時、友人の一人から勧められたのがマッチングアプリだった。ものは試しにと会員登録し暇な時間に何人かの男性とやり取りを繰り返すこと一ヶ月。
 まさか、会う約束を取り付けた男がとんでもない曲者だとは思わなんだ。

「ねえ、いいじゃん。彼氏いないんだろ?お互いに慰め合おうよ」
「あ、あの……。初対面でそういうのはちょっと……」

 美雨としては、彼氏になるとまではいかなくとも楽しく食事が出来ればいいなぐらいの軽い気持ちだった。
 ところがやってきたのは露骨にホテルに誘ってくるような酷い男性だった。

(メッセージでのやりとりは感じが良かったのに……!!)

 美雨は己の選球眼を心から恨んだ。
 何度もしつこく身体の関係を迫られ、美雨はすっかり困っていた。やんわり断っても男は決してめげない。波風立てないを心情にして生きてきた美雨にとってこれは辛い。

「俺、自分で言うのもなんだけど、結構上手いよ?」

 どさくさに紛れ肩を抱かれ、ゾゾゾと背筋に悪寒が走る。
 ……これ以上は到底我慢できそうにない。

 美雨に我慢の限界が訪れようとしたその時、突如ヒーローが現れた。

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