【短】最強のあたしが3番目に強い男に恋をした
声からすると、女だ。

そのことに、少なくない驚きがあった。




『あたし? 通りすがりの不良だよ。……あっ、今のかっこよくなかった!? 強キャラみたいでさー!』


『……』




目蓋が腫れて視界が狭まっていたせいで、そいつの顔は口元しか見えなかった。

それでも、よく笑うやつだった。


『救急車が来るまで暇だろ』と、一方的に色んな話を聞かせてきたそいつは、サイレンが聞こえてくると立ち上がった。




『あ、来たみたいだな。じゃ、あたし面倒ごとはゴメンだから。元気になれよー!』


『ま、て……な、まえ……』




名前だけでも、聞きたかった。

そいつの話は楽しくて、聞いてるだけで心が軽くなっていったから。

でも、そいつは去って行った。
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