【短】最強のあたしが3番目に強い男に恋をした
数年後、“最強の不良”という、個人の名前と化した称号を持つやつの噂を聞くようになった。
そいつの素性は一切が謎で、色んな憶測が飛び交っているらしいが、俺は勝手に、あの時の女がそうなんだろうと思っていた。
圧倒的な力に対する憧れ。
そしてそこに混ざる、不純な興味。
雲のように掴めない“最強の不良”に、いつか会うのが、俺の夢だった。
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「神龍の総長に会いたい」
訪れた最強の暴走族の倉庫で、俺は告げる。
そう簡単に、会えるとも思っていないが。
「あぁ? はいそうですか、で会わせるわけねぇだろ。とっとと帰んな」
「……“最強の不良”のことで、話がある」
そう言うと、犬猿の仲というのは本当なのか、空気がピリッとした。
応対したやつが、ギロリと俺を睨む。