【短】最強のあたしが3番目に強い男に恋をした
なんで、ここに。

そう思った直後、宏大の手を振り払って走り出す。


会いたくない。

話したくない。

その顔を、見たくない。



必死に走った。がむしゃらに走った。

どこへでもよかった。

ただただ逃げたかった。


何回角を曲がっただろう。

自分の荒い呼吸の音しか聞こえない。




「待て!」


「くっ……!」




腕を掴まれた。

皮肉なことに、食事を抜いて弱った体じゃ上手く力が出せなくて。


風吹の手を振り払おうと腕を振ったら、バランスを崩した。

受け身を取る前に、あたしの体は風吹に抱き寄せられて、そのまま転ぶ。




「はぁ……っ、やっと……捕まえた」


「な……なに、庇ってんだよ。あたしに、そんな必要ないのに……」




あたしの背中は地面についた。

でも、風吹の腕が下敷きになって、痛手は負わなかった。
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