Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
2杯目のビールを飲み切ったとき、左隣の席にスーツの男性が座る。
「雫」
その声に驚いて顔を左に向けてみれば、神流さんだ。
「……なんでこんなところに」
「探した。昔行ったことのある店、一軒一軒な」
「私はもう帰りますのでごゆっくり」
立ち上がると、左手が掴まれる。
その強い力に驚いて手を窄めそうになったけど、それは許されなかった。
「待って。奢るから一杯だけ付き合って。常陸野ネストは飲んだ?」
「ま、まだですけど」
「じゃ、マスター。常陸野ネスト二つ」
勝手に頼まれてしまう。それはこのままいたら次に頼もうとしていたもの。
見るとマスターはもうビールをつぎ始めていた。