Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
彼の目が、座ったら、と長いまつ毛を伏せて席を指す。
言いなりになりたくないけど、注がれるビールの小麦色に負けた。
決して彼の色香にやられたのではない。
少ししてストンと腰を落とし、それからできるだけ右を向いた。
「それで? 誰が好きなんだ?」
はっきり聞かれて、何のことだと思ったけど、そう言えば朝にそんな会話をしたと思い出す。
まさか覚えていて、開口一番それを聞かれようとは思いもよらなかったので、ふぇ? となんとも間抜けな音が自分の口から出てしまった。
「雫が好きな男、誰?」
「そ、そんなこと言うはずないじゃないですか。それ、セクハラですよ」
「すまない」
淡々と謝るものだから、本当に謝る気があるのか分からない。
彼は昔からそうだった。
別れ話を告げたときだって、表情は一つも崩れなかった。