Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
3章:5年前
【5年前】
一之宮総合病院を後にして、私と神流さん、そして水原と、水原の教育係で先輩SEの田中さん、セールスSEの柳井さんの5名で歩いていた。
寝不足なのにみんなの表情は明るい。
「俺と芦川は一度帰社して報告してから店に向かうから」
「神流さん、今日は飲みましょうね! ちょうど新人研修も最後だから、水原も覚悟しとけよ」
「はい」
田中さんが言って水原が頷くと、神流さんはみんなを諭すように話す。
「先に飲んでていいけど、みんな寝不足だから飲みすぎないように」
「はーい」
三人と別れて、私たちはタクシーをつかまえた。
奥に神流さん、そして私もその横に乗り込んだ。
成功の高揚感でこれまで蓄積していた睡眠不足は吹っ飛んでいるように感じていた。
私はタクシーの座席に座って、両手をぎゅうと握り締める。すると隣に座っていた神流さんがいつもの表情でこちらを向いた。
「芦川、今日は無理するなよ。最初に顔だけ出せばいいから」
「違って……なんていうか、コンペ勝てたの嬉しくて今でも震えるだけで」
仕事でこんなことってあるんだって初めて知った。嬉しくて手が震えるなんて……。
そんな私を見て神流さんは「頑張ったもんな」と優しい声を出した。