Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
「コンペのプレゼン、最後の芦川の回答が良かったな」
「……あれ、神流さんに無理やり振られて驚きました。質問に答えたのが私で良かったんですか?」
「あれだけ調べたんだから、簡単に答えられただろう。『アシスタントさんまでそれだけ知ってくれているなら安心して任せられる』って決め手にもなった」
彼はいつも笑うでも怒るでもなく、淡々と話してくれる。
それが怒られるべき場面ではやっぱり落ち込み、褒められるときには嬉しくなるのだから不思議だった。
そして今は褒められてるってわかる。
神流さんの誉め言葉は他の誰に言われるより嬉しい。
「本当によかったです。足をひっぱるんじゃないかってずっと心配でした。最初、私が入ったあとすぐ一つコンペに負けたじゃないですか」
「あれは全国規模の医療ネットワークで正直かなり厳しかったからな。取れなくても仕方なかった。俺の力不足だ」
「でもアシスタントが私じゃなかったら……」
「そんなことない。芦川はもう少し自信もて。もっと考えてることも言っていいんだから」
「でも要領がよくないのは確かなので」
最初は総務に配属されると思っていたから、営業アシスタントとはいえネットワークの知識がほぼなかった私は、この分野の言葉や雰囲気にかなり苦労した。
そして、私は何度も痛感した。なんでこんなに自分は要領が悪いんだろうって。
しかし神流さんははっきりと言った。
「芦川は努力でそれ以上カバーしてる。サボらずに努力し続けられるのは、間違いなく芦川の才能だ」
「あ、ありがとうございます」
神流さんはなんでこんなに嬉しいことを当たり前のように言ってくれるんだろう。
(私、神流さんが教育係で良かった……)