Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
「そもそも営業は、浅間さんがさっさと帰ってるんだし、お前も帰ればよかったのに」
水原が言う浅間亜季さんは、私がアシスタントについているNOEシステム医療事業部門の営業の先輩女性だ。
そして、NOEシステムの社長・浅間恵吾社長の娘でもある。
誤魔化すように笑って、やはり気を許した同期だからか本心を告げた。
「仕事で終電逃がしちゃったのももちろんあるけどさ、勉強するのもこっちの方がちょっとした疑問ならすぐ聞けて助かるんだ。だからつい」
ここは、システムエンジニアも多く在籍してる部門とあって、どの時間でも大抵人がいる。
夜、疲れはじめたころにコーヒーを入れて渡せば、勉強する中でわからないところや用語をそっと聞けるので、かなり助かっていた。
「俺にならいつでも聞けよ」
「頼りにしてる。水原もまた勉強してるよね」
「次はデータベーススペシャリストとれって言われたんだよ」
「それ、かなり合格率低い難しいやつでしょ? 田中さんがとったの30代後半じゃなかった?」
「あぁ。そんなものを過去に20代前半で取った先輩がいるからお前も受けてみろってさ。神流さんとは頭の作りが違うんだから比較されてもさぁー」
神流さん、という単語に、ドキ、と胸が鳴って固まってしまう。
すると、水原もそれに気づいたのか慌てて取り繕うように言った。
「ほ、ほら、会社からも補助出るし、独立するとか考えても今のうちに取っておきたいよなぁって」
「う、うん。そうだね」
「それより、今から着替えたら下のカフェに行かないか?」
それを聞いた瞬間、お腹がぐううう、と派手に鳴ってしまって水原に笑われた。
時間を見ると7時。
基本9時始業なので、ロッカー室横のシャワーを浴びて支度しても、朝食をとれそうだ。