Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
なんとかその日の打ち合わせが終わり、会社の前まで神流さんを送ると言う浅間さんと、エレベータ前まで歩く。
私と水原の歩く前で、浅間さんは至近距離で神流さんに話しかけていた。
「勝ち取れば、神流さんとまた仕事できますね。神流さんの会社なら安心だって、私も推しました」
浅間さんは嬉々として話していた。
「ありがとうございます」
「そんな他人行儀な。私と神流さんの仲じゃないですか〜」
「今回、芦川は何を担当するんですか? 芦川はクライアントとのやりとりもうまくやるでしょう」
神流さんの声にドキリとする。
くるりと浅間さんが私を振り向いた。私だけに向けられている彼女の視線がなぜか痛い。
次の瞬間、浅間さんはにこりと笑って言った。
「神流さん、芦川さんの指導係でしたもんね。彼女、要領が良くないからご心配されるお気持ちもわかります。でも今回もただのアシスタントです。仕事はいつも私に言われた通りにしているだけでいいから楽なんですよ」
ちょうどエレベータがやって来た。
神流さんと浅間さんが並んで乗り込む。
「そういえば、今夜は19時に帝都パラシオットホテルですよね」
ドアが閉まる前、浅間さんの声に顔を上げてしまった。
口角を上げた浅間さんと目が合った。
神流さんがなにか言いかけた時ドアが閉まる。
ふたりの生々しい会話も、様子も、見ていられなくて頭を下げて見送った。