Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
 水原は苛立ったように頭を掻き、まっすぐ私を見つめた。

「もういい加減、俺でいいだろ」
「え……?」

「俺は雫が好きだ」

 はっきりと告げた水原の目も声も真剣だった。
 でも私は告白そのものより、水原に呼ばれた私の名にぎゅっと胸が痛む。

 その名前は神流さんだけの特別なものだと、今になって再確認してしまったから。

「水原、何言ってるの? 仕事中……」
「定時は過ぎてる。それにタイミングは逃がしたくない。そうでなきゃ一生言えないと思うから」
「私は誰とも付き合わない。ちゃんと仕事して、コンペも成功させたい」
「それは神流さんが関わるから?」

「違うわよ!」

 怒って水原を睨むと、彼は嬉しそうに破顔する。余計に腹が立った。

「芦川のそういう顔が見れただけで告白してよかったわ。お前、普段そういう顔は見せないじゃん」
「なっ……」

 私はただ心底怒ってるだけなのに。
 腹も立つが、私が神流さんの表情の変化を見られたのが嬉しかったように、彼もそう感じているのかもしれないと思うと泣きそうになった。

 水原は嬉々とした表情で「とにかく今から飯でも行こうぜ、一人でいたくないだろ」と言って私の頭を軽く叩いた。
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