Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
「も、もし、芦川さんがKANNAクリエイトにいったら、うちからKANNAへの仕事は今後絶対に回さないわ! 今回のシステムそうよ!」
取り乱した様子の浅間さんの声に驚いたけど、神流さんは飄々と返す。
「うちはもともとそちらから依頼されたから参加しただけで、この仕事がなくても構いませんし、そもそもNOEと関わらない受注でもう手一杯です。今回受けたのは、芦川がまだNOEにいたからという理由です。ちなみにもう社長には伝えていますが、社長はうちと契約をするとおっしゃってくれてますよ」
水原も困ったように額をかいて言う。
「あんな大規模なシステム、神流さん抜きなんて無理ですよ。それに芦川が今回SEたちともやり取りして、芦川の頼みだからって聞いてくれた人だって多いんですよ。残念ながら浅間さんが頼んでも無理だと思います。うちのSEはみんな優秀なんで、お願いするときだけ媚びてくる人間かどうかくらい見抜いてます」
水原がはっきり言って浅間さんは唇を噛んだ。
「水原くんは芦川さんのこと好きじゃなかったの」
「好きですよ。ずるい手を使っても手に入れたいとまで思った。浅間さんと同じです」
「……」
「浅間さんも、神流さんが芦川しか見てないとわかってたんでしょう。だから、あえて誤解させるようなことを吹き込んだ。でも、芦川も神流さんも、浅間さんや俺がしたことをわかってからも、自分たちが別れたのを俺たちのせいにはしなかった」
「なんで……」
「俺たちは何をしたって、最初から蚊帳の外だからですよ。それって、騙したのを激怒されるより、よっぽど寂しくありません?」
水原が目を伏せて言い、突然こちらを向いた。