Rebuild ~SEな元カレは彼女との空白の5年間をとり戻したい~
――ちょっとね、半分プライベートな人と会うのよ。会社で会うのは変な感じなんだけどね。
打ち合わせ、としか書かれていない予定を指さし、浅間さんは言っていた。
『プライベートな人』って、神流さんの事だったんだ。
ズキン、と胸が痛む。
あのときより、そんな胸の痛みはマシになっているかと思ったのに、それ以上だった。
「芦川?」
ちょん、と水原に肘でつつかれる。
はじかれたように顔を上げると、神流さんと目が合った。
相変わらず端整な顔立ち、長いまつ毛に、バランスの取れた眉。前髪は少し長くて、サイドは短くしていた。
大柄な骨格なのに、体型は昔よりずいぶん痩せた。
(やっぱり独立してからも忙しいのかな)
神流さんは私の目を見て口を開く。
「芦川、今から打ち合わせ前まで少し時間いい?」
「え?」
「雫はアシスタントですよ」
水原が返事したけど、表情一つ変えずに神流さんは続ける。
「でも、芦川なら事情はよく知ってるだろ。聞きたいことがあるんだ」
「俺で良ければお聞きします。システムの件ですか? 神流さんにまで頼むとすれば国立の医療システムのコンペの件ですよね」
水原がなおも返す。
水原の様子は少し変なのに、神流さんは柔らかい声で言った。
「あぁ、さすが水原。国立の医療システムの件だけど、あれって一之宮を見てのことだろ? それで一之宮と国立の話がつながった経緯を聞きたいんだ。システムの中身じゃなくてね」
「……それは」
「だから、少しだけ。頼むよ、芦川」
ぱち、と軽く手を合わされる。
昔の上司、しかも私の新人時代の教育係にそんなことをされて断れるはずはない。
私は頷き、神流さんについて歩き出した。