卒業
「……おはよ。」
学校につき教室に入ると、
あいつは席に座っていた。
2人きりの教室に少しだけ緊張する。
「早いね、そんなに卒業式楽しみだった?」
ふふっと笑うあいつを見て、
大袈裟にため息をつく。
「その逆だよ、卒業したくねぇ。
このままずっと高校生してたいよ。」
「ダメだよ、大人にならなくちゃ。」
「そうだな、でも……
お前とはもう会えなくなるからさ。」
あいつは、目をまんまるくして、
そのあと噴き出して笑い始める。
楽しそうでなによりだけど、
なんだか馬鹿にされた気分で口を尖らせる。
「なんでそんなに笑うんだよ。」
「あははっ、
だって感傷的なキミ見たの
意外と初めて?だからさ。」
一通り笑うと、
あいつは寂しそうな目をして俺を見つめる。
一瞬の沈黙。
俺たちは口をつぐんだまま、見つめ合う。
「あのさ。」
思ったより低い声が出て、
少し咳払いをする。
「今、昨日言ってた……
少し時間もらっていい?」
「え?うん、いいよ?」
深呼吸をして、
あいつの目をじっと見つめる。
あいつも逸らさずに俺の目をじっと見返す。
「俺さ、初めてお前と会ったとき、
ここまで仲良くなるなんて
1㎜も思ってなかったんだ。
今こうして2人で話しているのだって、
不思議な気持ちだよ。
……でも、お前と会って2年目の春には
もう気づいたら目で追っかけるくらい、
気になって仕方のない存在に
なっていたんだ。
もっと早く言えば良かったんだろうけどさ、
言ったらもうこの関係も
終わってしまうってことわかってたからさ。
今の今まで言わずに来ちゃったんだよな。
……なぁ、お前。
ううん、遥香。
俺、遥香のことが好きだ。
ずっと、ずっと、好きだった。」
「……うん。」
「遅くなって、ごめん。」
「……遅くないよ、これで合ってるよ。
私だって、優のこと、好きだったから。
ちゃんと好きになっちゃったんだ。
……でも、不思議だね。
両思いってこんな感じなんだね。
いい体験、できちゃった。」
あいつ……遥香は、くすくすと笑ったあと、
なんだか泣きそうな顔をする。
「私の言ってたこと、
覚えてくれてたんだね。
告白されるのが夢ってやつ。えへへ。
……ありがとう。私を好きになってくれて。
私を……
この学校生活の中に存在させてくれて。」
ふわりと窓から風が流れてきて、
教室のカーテンが揺らめく。
日差しが少し暗い教室を照らす。
忘れない、この学校生活を。
ここに遥香がいたことを。
学校につき教室に入ると、
あいつは席に座っていた。
2人きりの教室に少しだけ緊張する。
「早いね、そんなに卒業式楽しみだった?」
ふふっと笑うあいつを見て、
大袈裟にため息をつく。
「その逆だよ、卒業したくねぇ。
このままずっと高校生してたいよ。」
「ダメだよ、大人にならなくちゃ。」
「そうだな、でも……
お前とはもう会えなくなるからさ。」
あいつは、目をまんまるくして、
そのあと噴き出して笑い始める。
楽しそうでなによりだけど、
なんだか馬鹿にされた気分で口を尖らせる。
「なんでそんなに笑うんだよ。」
「あははっ、
だって感傷的なキミ見たの
意外と初めて?だからさ。」
一通り笑うと、
あいつは寂しそうな目をして俺を見つめる。
一瞬の沈黙。
俺たちは口をつぐんだまま、見つめ合う。
「あのさ。」
思ったより低い声が出て、
少し咳払いをする。
「今、昨日言ってた……
少し時間もらっていい?」
「え?うん、いいよ?」
深呼吸をして、
あいつの目をじっと見つめる。
あいつも逸らさずに俺の目をじっと見返す。
「俺さ、初めてお前と会ったとき、
ここまで仲良くなるなんて
1㎜も思ってなかったんだ。
今こうして2人で話しているのだって、
不思議な気持ちだよ。
……でも、お前と会って2年目の春には
もう気づいたら目で追っかけるくらい、
気になって仕方のない存在に
なっていたんだ。
もっと早く言えば良かったんだろうけどさ、
言ったらもうこの関係も
終わってしまうってことわかってたからさ。
今の今まで言わずに来ちゃったんだよな。
……なぁ、お前。
ううん、遥香。
俺、遥香のことが好きだ。
ずっと、ずっと、好きだった。」
「……うん。」
「遅くなって、ごめん。」
「……遅くないよ、これで合ってるよ。
私だって、優のこと、好きだったから。
ちゃんと好きになっちゃったんだ。
……でも、不思議だね。
両思いってこんな感じなんだね。
いい体験、できちゃった。」
あいつ……遥香は、くすくすと笑ったあと、
なんだか泣きそうな顔をする。
「私の言ってたこと、
覚えてくれてたんだね。
告白されるのが夢ってやつ。えへへ。
……ありがとう。私を好きになってくれて。
私を……
この学校生活の中に存在させてくれて。」
ふわりと窓から風が流れてきて、
教室のカーテンが揺らめく。
日差しが少し暗い教室を照らす。
忘れない、この学校生活を。
ここに遥香がいたことを。