エリート航海士と結婚したら、溺愛されて愛の証を授かりました。
「調月さーん、これどこでしたっけ」
「それはね、小林さん。こっちだよ。Bの棚の二段目」
翌日、私はいつも通り出勤していた。ここは全国チェーンを展開している雑貨屋【ミエル】と言うお店の一つだ。そこの私は店長をしており、今日一緒のシフトの小林さん。まだ半年しか経っていない大学生だ。
「ありがとうございます……この柄可愛いですね」
「そうだよね。これ人気でそうだから、明日からこの柄シリーズでディスプレイするよ」
「了解です! 楽しみですね。私も社割で買っちゃおうかな」
楽しそうにふふと笑う小林さんは、元々このミエルの大ファンだ。彼女が高校生の頃から通ってくれていて高校卒業して大学が決まった瞬間、バイト面接に来た子だったりする。
楽しそうにしている彼女を見てるとほんわかして、私まで笑っていると「こんにちわ」と低い声が聞こえた。そこには、昨夜閉店間近でやってきた男性が立っていた。
「あ、あなたは昨日の!」
「はい。こんにちわ。昨夜は遅い時間にお邪魔してしまい、申し訳ありませんでした。それに、母にとても喜んでもらえました。本当にありがとうございました」
「それはよかったです」
本当に、良かった。
そう言っていただくのが一番嬉しい。
「本日はどうされたんですか?」
「俺、交久瀬遥生といいます。職業は、一等航海士です」
「コウカイシ……?」
「あ、すみません。商船に乗っています」
えっと、この方が船に乗っているのはわかったけど……どうして自己紹介をしてるんだろう。
「それで……交久瀬さん。何の用でしょうか」
「俺の恋人になってほしいんです」
……え? 恋人?