【コンテスト作品】たこ焼き屋さんの秘密。


 お兄さんはたこ焼きをくるくると焼きながら、私にそう問いかけてくる。

「え……?」

「ここずっと残業だったよね? いつもこの時間だから」

 そっか、毎日私のこと見てるから、そういうのも分かるのか……。

「うん、まあ……」

 すると、お兄さんは「ねえ、たこ焼き食べてきなよ」と微笑みかける。
 
「今日は特別に俺のおごりだよ。 好きなの食べていってよ」

 まさかそんなことを言われると思ってなかった私は、思わず「え?」となった。

「ほら、好きなの選びなよ、お姉さん」

 急かさせるままに、私はメニューからキムチーズたこ焼きを選んだ。

「じゃあ、座って待ってて」

「あ、うん」

 たこ焼き屋の隣のイートインスペースでカバンを置いて、たこ焼きが出来るまで待つことにした。

「お姉さん、なんかあった?」

「……え?」

「なんか元気ないみたいだけど」

 そんなに疲れているのだろうか、私は。 きっと疲れのせいで、元気がないように見えるのかな。
 たしかにここずっと忙しい。本当に忙しい時はお昼ご飯を抜いている気がするし。

「あんまり無理すると、身体壊しちゃうよ」

 すごい心配、してくれてる……。
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