ダイエット中だけど甘い恋を食べてもいいですか?
私はあれから3日に1度のペースで、フィットネスクラブへ通っている。

トレーニングプラン通りに筋トレをして、その後ランニングマシンで有酸素運動をする。

それに加えて、スタジオで行われるヨガやストレッチのクラスにも参加するようになった。

ちなみに澤乃井さんは決まって毎週金曜日の夜に、フィットネスクラブを訪れる。

私のようなゆるい筋トレだけではなく、バーベルを使った激しいウエイトトレーニングをして滝のような汗を流し、その後ランニングマシンで走るのがルーティンのようだ。

私はサイクリングマシンで音楽を聴きながら、なんとなく澤乃井さんの姿を目の端でそっと捉えるのが習慣になってしまっていた。

自分以上に頑張っている人を見るのは励みになる、というのは建前で、澤乃井さんのカッコイイ姿は目の保養なのだ。

そして時には自分から澤乃井さんに挨拶をして、筋トレのコツなどを教えてもらったりするようにもなった。

その日の金曜日も、私は音楽を聴きながらランニングマシンで汗を流した。

設定時間を走り終わり、トレーニングルームの隅にあるベンチに腰掛け、タオルで汗を拭きながら、いつものように澤乃井さんの姿をキョロキョロと探した。

筋トレマシンにもランニングマシンにもいない。

もう帰っちゃったのかな・・・と思っていると、頭の上から低い声が降ってきた。

「誰か探してんの?」

ハッと見上げると澤乃井さんが私を見てにやりと笑っていた。

「えっ?いや、あの、えっと・・・」

「もしかして、俺?」

そう図星をさされて、わたしの顔はゆでだこのように赤くなった。

「ち、違うんです。澤乃井さんのフォームが綺麗だから、いつも陰ながら参考にさせてもらっていまして・・・」

「ふーん。そうなんだ。」

澤乃井さんは嬉しそうに白い歯を見せた。
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