ダイエット中だけど甘い恋を食べてもいいですか?
「もうフィットネスクラブには慣れた?」

澤乃井さんの柔らかい声音に、私は頷いた。

「はい。もうほとんどの筋トレマシンを使いこなせるようになりました。」

私は一か月のお試し期間が過ぎた後も、1万円の利用料を払い、クラブに通っていた。

「筋トレを頑張るのはいいけど、回数をやり過ぎても疲労を蓄積させるだけだから、ほどほどにしとけよ。」

「そうなんですね。気を付けます。」

そうこうしているうちに、おつまみが運ばれてきた。

野菜と鶏肉の串刺しやかぼちゃのコロッケ、サイコロステーキ、そして私の為にトマトサラダや鶏の蒸し焼きも頼んでくれていた。

澤乃井さんはまたもや豪快にサイコロステーキを口に運んだ。

私も冷たくてフレッシュなトマトの輪切りを箸で挟んで口に入れた。

「これも食ったら?野菜だけなんて身体に悪いだろ?」

そう言って澤乃井さんは、私の前にかぼちゃのコロッケが乗った皿を置いた。

「え、でも」

「いいから。」

「・・・じゃ、いただきます。」

私はその揚げたばかりのかぼちゃコロッケを箸で切り分け掴むと、口の中へ入れた。

アツアツでカリカリな衣の中に、甘くてほっこりとしたかぼちゃが入っている。

「んっ」

あまりにも美味しすぎて、思わずいつもの口癖が飛び出してしまった。



「おいしーー!!」



「ぶはっ」

私の声を聞いた澤乃井さんが後ろを向きながら噴き出した。

「はははっ!芽衣、美味そうに食うんだな。」

「スミマセン!うるさいですよね!」

「いや・・・全然いいと思うよ。そういうの。」

そう言いつつも、澤乃井さんがずっと笑い続けているので、私はまたもや赤くなった。

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