ダイエット中だけど甘い恋を食べてもいいですか?
ふと文香さんの視線が響さんの手の辺りで止まっていた。

文香さんは何をそんなに凝視しているのだろう?

私が訝しんでしると、文香さんがその答えを言葉にした。

「澤乃井さんのその腕時計、とても素敵。」

たしかに響さんの右腕には、文字盤カラーがブラックでステンレススチールが使われた、見るからに高そうな腕時計がさりげなく嵌められていた。

「ありがとうございます。オヤジに就職祝いで貰ったモノなんですよ。」

「澤乃井さんによくお似合いだわ。」

文香さんはその美しい瞳で、じっと響さんの顔をみつめた。

その視線に気付いた響さんも文香さんをみつめ返した。

響さんの真剣な眼差しが文香さんの顔をじっと捉えた。

「こういうのデジャブっていうのかな。」

澤乃井さんが嬉しそうな顔をした。

「文香さんとはどこかでお会いしたような気がします。」

「ええ。私もそう思っていたところよ。」

そしてふたりは微笑み合った。

それって・・・前世からの運命的な出会いってこと?!

そのワンシーンは、ふたりだけがわかり合えている、瞳だけの会話が成り立っているように思えた。

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